第6話です。
前回から1ヶ月以上空いてしまいました。
まぁ、月刊連載と思えば全然ありだね。
前回までの記事はこちら。
男もすなる雀荘の思い出話といふものを女もしてみむとてするなりィ。
恐怖の代走
雀荘でのバイトを初めて2ヶ月ほど経った頃だったろうか。
麻雀の最低限のルールは分かるようになっていた私は、ある日、客の「代走」に入ることになった。
「代走」とは、客がトイレや電話で少し卓を離れる時に、メンバー(店員)が代わりに麻雀を打つことだ。
数ターンと言えども、客の金で麻雀を打つのだ。
プレッシャーがハンパない。
私はこのバイトを始めてからずっと代走に怯えており、2ヶ月間うまいことのらりくらりと避けてきた。
しかし、ついにその時が来てしまった。
ちょうど私が卓の後ろを通った時に、そのオジサマ客は「ちょっと入っといて」と軽く言い残してトイレに行ってしまったのだ。
私は一瞬尻込みしたものの、他の3人の客を待たせるわけにはいかないので、即座に席に座った。
代走に関して私が予め先輩から教わっていたことは、次の4つ。
- さっさとツモって切れ
(他の客を待たせるな) - 何が何でも振り込むな
- 役に絡みそうな牌は絶対に切るな
- ドラを切ったら殺される
いずれも麻雀を打つ時の基本である。
だがしかし。
客の金と自分の命がかかった窮地で、前提となる①を維持しながら同時に②③④も遂行するのは、麻雀初心者の18歳女子大生にはかなりしんどい要求だった。
友人と遊びで打つ時は、うっかりミスで1,2巡目でドラを切ってしまったとしても
「あちゃ~やっちゃったよ(≧∇≦)/」
で済む。
しかし、客の代走でドラを切ると、
殺されるのである。
こちとら時給900円でチャイナドレスまで着て汗水流さず働いているというのに、そんな理不尽なことがあっていいのだろうか。
よく知らないオジサンに、「ドラを切ったから」などというわけわからん動機で殺されるなんてまっぴらごめんだ。
というか、よりによって親かよ。
震える手で、山牌から14枚の我が兵士たちを揃えていく。
私は全神経を手元の牌とドラ表示牌に向けた。
さぁ、私の手で新たな局を始めよう。
息を飲みながら、
それを他家に悟られないように、
そっと牌を切った。
何の牌切ったかはさすがにちょっと覚えてないけど、たぶん「西」とかやろ。
下家の客は、興味のなさそうな顔で私の捨て牌を一瞥して、山に手を伸ばした。
(ホッ、通った……)
どうやら命だけは助かったようだ。
だかしかし、まだオジサマ客が戻ってこない。
そりゃそうだ。
雀荘の1巡なんてマジで一瞬で終わる。
――ドラダケワキルナ ドラダケワキルナ
――イチキュウジハイ イチキュウジハイ
――デモトンノコセ デモトンノコセ
頭の中で念仏のようにそう唱えながら、私は悪夢のような数巡を何とか乗り切った。
バタバタとオジサマ客が戻ってきて、私の代走デビューは無事に幕を閉じた。
時間にして、ほんの1分ほどの出来事。
時給900円だから、計算すると
私がこの恐怖の代走で稼いだ額は、
15円 だ。(900円÷60分)
初心者メンバーにとっては幸いなことに、客側としても大事な局面で代走を頼むことはほとんどない。
大抵は、局が変わって雀卓がガチャガチャウィ~~~ンと山を作っている時にトイレに立つ。
つまり、代走は1,2,3巡目あたりで引き受けることが多いため、まだ他の3名も手牌が整っていることは少なく、たとえ初心者の私でも振り込む可能性はかなり低かった。
なので、「②何が何でも振り込むな」という最も恐ろしいオーダーは、そんなに気にしなくて良かった。
しかし、時の運というものがある。
万が一、不幸にも他の誰かの手牌が整っていて、
私が開始数巡で役満に振り込んでいたとしたら……
私には何の落ち度も無いとは言え、32,000点だ。
客は笑って許してくれるだろうか。
ちょっと想像の域を超えていて、
もはや誰にも分からない。
英語で言うと、nobodyknows+
いつ聴いてもあがる~~~~!!!!!!
エンジョ~イ!!!!!
音楽はナリツヅケル!!!!
エンジョ~イ!!!!!
届けたいムネノコドウ!!!!
コッコーロオドルッ♪♪♪
つづく?